Interview

スペシャルティコーヒー専門店

Coffee Base MEGURO

007

「水を通して地域課題を解決していく」
スペシャルティコーヒー専門店のキッチン

2025.11.26up

    キッチンから生き方を見つめるインタビュー。
    地域課題のソリューションをコーヒーで導き出す
    Coffee Base代表の
    鬼追善久(きおいよしひさ)さんに、
    コーヒーと水のこだわりを聞きました。

    スペシャルティコーヒーで地域課題を解決していく

    Coffee Baseは京都を中心に大阪、そして今回の東京・目黒にも展開するスペシャルティコーヒー専門店です。開業する以前、僕はIT関連の仕事に従事していて、様々な業種の方々のSNSに関するコンサルティングを主に行っていました。そんなある時、コーヒー豆の焙煎機をつくっている企業の仕事をさせていただいたなかで、あまりに話が飛ぶのですが、一緒にコーヒー店を開くことに。コーヒーは好きでよく飲んではいたものの、お店にも立たなければならなくなったので、それを機にスペシャルティコーヒーについて猛勉強しましたね。前身に当たるそのお店から派生するかたちで、京都の四条烏丸にCoffee Base KANONDOを立ち上げたのがCoffee Baseをはじめたきっかけになります。

    どの店舗においても、おいしいコーヒーを淹れることがモットーになっているのですが、京都にはギャラリーを併設したお店があったりと、場所に応じて異なるもうひとつの軸を設けています。特に象徴的なのが、京都の梨木神社のなかに店舗を構えたCoffee Base NASHINOKI。そこでは、京都三名水のひとつでもある「染井(そめい)の水」を使用してコーヒーを淹れているんです。かつては日本中どこでも井戸水を引いていた風景がありました。しかし水道設備の普及とともに水質検査、櫓(やぐら)の修繕費など、井戸を維持するためのコストが次第に無視できなくなり、いつの間にか消滅していった経緯があるんです。染井の水も同様の経緯を辿りそうになった井戸水なのですが、神社や周辺の地域が今日まで繋ぎ残してきたんです。少しでも多くの方に保全を続けてきた人々の努力にも目を向けてもらいたかったですし、それによってコーヒーにも新たな文脈を生むことができるのではないか、と神社内にお店を構えさせてもらいました。コーヒーであれば気兼ねなく手にとれますし、名水で淹れたとなれば飲んでみたくなるじゃないですか。売上の一部は神社に還元していて、それで湧き水を管理できる。放っておいたら枯れてしまうという課題を、コーヒーが解決してくれているわけです。

    ご近所付き合いが繋ぐ地域性

    もうひとつの課題と感じていたのが、コーヒーの商圏の狭さでした。Coffee Base MEGUROでも目玉になっているコーヒーゼリーのように、何かしらをきっかけに遠方からお客さんが来てくれることが稀にあったとしても、結局のところ、ご近所との繋がりが大切だと思っているんです。Coffee Base MEGUROは関東初進出の店舗で、ここで出しているホットドッグは近所のお肉屋さんのソーセージを使用していますし、ほかの食材も極力近所の商店街で購入するように心掛けています。実はこのお店の上階は居住スペースになっていて、“早起きしたくなるマンション”というコンセプトのもとでつくられたんです。毎日お越しいただく入居者の方もいらっしゃいますし、ペットも同伴可能なので、日常生活の延長でご利用いただけていると思っています。また、お隣は古くからある理髪店で、その隣が中華料理店、次がもつ焼き居酒屋と並んでいて、Coffee Base MEGUROのオープン準備段階から挨拶はもちろん、スタッフでご飯を食べに行ったりと利用させてもらっていました。おかげさまですごく仲良くさせていただいていますし、気分転換にとコーヒーを飲みに来ていただくことも。人が溢れるお花見シーズンには氷の貸し借りができるなど、互いに助け合える関係性が築けているのはありがたいですよね。

    コーヒーと向き合うことは、水と向き合うこと

    こういった各地域でのご近所付き合いもあってか、おかげさまでCoffee Baseもいまでは7店舗、年内にもう2店舗増える予定です。お店が広がれば、自ずと扱う水も多岐にわたってきますし、こうして展開していくなかで日々コーヒーと向き合うことは、水と向き合うことと言っても過言ではない。コーヒーと水は切っても切り離せないですし、一口に水といっても場所によって個性は異なるんですね。各店舗それぞれで浄水を使用しているのですが、硬度のバラつきによる味わいの変化があり、その個性を活かしながらCoffee Baseの味を出せるよう調整してコーヒーを淹れています。Coffee Baseは必ずお店の名前に土地名を入れていて、それには核であるCoffee Baseに各地の個性が加わっているという意味があるんです。

    クリアな水のおいしさが活かす個性

    僕たちが扱っているスペシャルティコーヒーは、ある一定以上の高品質な豆を熱風式の焙煎機で焙煎してつくるので、直火よりもスモーキーさが抑えられ、豆本来の香りや味わいが楽しめます。それらのニュアンスを余すことなく伝えるためには、コーヒーのポテンシャルを引き出す水が大切になる。水道水の雑味を取り除いてくれるトレビーノ®ブランチを使用することで、そういった表現がしやすくなりましたし、コーヒー豆の個性を出すにはもってこいですよね。ここではハンドドリップコーヒー、水出しコーヒーに留まらず、炭酸水、お酒を割る水、すべて蛇口一本でやっているので、常にフレッシュな水を使用できるのは嬉しいですし、トレビーノ®ブランチはサラッとシンク下に収まってくれるところも気に入っています。水という“地域の個性”を際立たせたいのに、フィルターブランドが目立ってしまうと意図がブレてしまいますから。また仕事柄、お客さんを見ているシーンが多いので、浄水に切り替わったことを音で知らせてくれる機能には助けられています。誤って水道水を注ぐようなミスもなくなりました。それと意外と大事なのが、水圧なんです。仕事柄、水を必要とするシーンは急いでいることが多いので、水の勢いが損なわれずに使用できるところもトレビーノ®ブランチを重宝している理由です。トレビーノ®ブランチをお持ちの方は、一般的な水道水との飲み比べをコーヒーでしてみても面白いかもしれないですね。

    建築家 山家 明

    Profile

    Coffee Base 代表

    鬼追 善久

    Yoshihisa Kioi

    1979年、大阪府生まれ。IT業界での独立後、偶然にもコーヒーの焙煎機をつくっている企業と出会い、それを機にコーヒーの道へ。2018年、京都四条烏丸に「Coffee Base KANONDO」を創業し、以降、京都を中心に大阪、東京とスペシャルティコーヒー店を拡大。各地域の特性やその場所の水を大切にしながら、スペシャルティコーヒーを通じた課題解決、周辺コミュニティの交流促進に取り組んでいる。また、近年は海外のイベントにも積極的に参加しており、実店舗の海外進出も見据えているという。

    https://www.kanondo.coffee